1.採毛部・デザイン
毛を採る部分は、通常後頭部から採りますが、毛の量が足りない場合には側頭部へとデザインを延長します。その際に患者さんの1cuあたりの毛量や毛質を手術前に把握し、それを基本にして毛を採る部分の大きさを設定します。男性型脱毛症は将来進む可能性があるので、2回目以降の手術の可能性を考慮に入れます。また包帯や絆創膏をしなくても安全に行うために、スキンクリニックでは一回の手術は2500本程度を上限と決めています。広範囲な場合や進行していく場合には、それを数回繰り返すことにより、脱毛部をカバーしていくよう考えます。手術は全て部分麻酔ですので入院の必要はありません。
一塊として採取された毛髪を大きないくつかの塊に分離し、さらにこれを細分してゆき、「Single and Bundle hair」に株分けします。この際、注意すべき点は、
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■植毛方法
Choi式(*)植毛器には4種類あり、移植する毛の大きさにより選択します。通常ヘアライン最前列にはSingle hairを、その後方にSingle hair及びBundle hairを植毛します。生来の毛の流れや角度を十分に考慮に入れます。
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包帯や絆創膏などは、必要ありません。毛を採った部分、毛を植えた部分ともに数日間塗り薬を塗るだけです。洗髪は、毛を採った部分は2日後からシャンプーが可能で、植えた部分は5日後から、ぬるま湯でかるく、10日後から通常通り可能です。毛を採った部分の抜糸は10日から2週間後に行います。毛を植えた部分は2週間〜3カ月の間に一度休止期に入り、その約80%が抜け落ちますが(この傾向は20、30代に多く見られます)、その後、通常通り発毛し、育ち伸びます。但し、50代以上の方にはこのような症例は少なく、3〜4ヶ月移植毛は成長せずに、その後次第に伸びていくかたちになります。
術前 |
術後 植えた毛は一度抜け落ちる |
術後5ヶ月 植毛部から徐々に生えてくる |
術後8ヶ月 植毛部が生え揃ってくる |
毛を採る部分に十分な量の毛髪があることが条件です。当然のことですが、手術をしても頭髪の全体の数は変わりません。また円形脱毛症には原則的に手術の適応がありません。(但し、症状が数年間変わらない場合には手術ができる場合があります。)糖尿病や高血圧症などの健康状態も十分配慮します。手術前に頭皮に感染や炎症がある場合には、そのような症状を治療し、改善してから手術をします。また、頭頂部の植毛は将来脱毛部分が広がる可能性を慎重に考慮して手術を行います。